(定款記載を欠く設立費用)
8‐1‐1 法人がその設立のために通常必要と認められる費用を支出した場合において、当該費用を当該法人の負担とすべきことがその定款等で定められていないときであっても、当該費用は令第14条第1項第1号《創立費》に規定する「法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきもの」に該当するものとする。
(資源の開発のために特別に支出する費用)
8‐1‐2 令第14条第1項第3号《開発費》に規定する「資源の開発のために特別に支出する費用」には、例えば新鉱床の探鉱のための地質調査、ボーリング又は坑道の掘さく等に要する費用のように資源の開発のために直接要した費用のほか、その開発に要する資金に充てるために特別に借り入れた借入金の利子が含まれるものとする。
(注) 固定資産を取得するために借り入れた借入金の利子は、たとえ当該固定資産の使用開始前の期間に係るものであっても、令第14条第1項各号に規定する繰延資産に該当しないことに留意する。
(公共的施設の設置又は改良のために支出する費用)
8‐1‐3 令第14条第1項第6号イ《公共的施設等の負担金》に規定する「自己が便益を受ける公共的施設の設置又は改良のために支出する費用」とは、次に掲げる費用をいう。
(1) 法人が自己の必要に基づいて行う道路、堤防、護岸、その他の施設又は工作物(以下8‐1‐3において「公共的施設」という。)の設置又は改良(以下8‐1‐3において「設置等」という。)のために要する費用(自己の利用する公共的施設につきその設置等を国又は地方公共団体(以下8‐1‐3において「国等」という。)が行う場合におけるその設置等に要する費用の一部の負担金を含む。)又は法人が自己の有する道路その他の施設又は工作物を国等に提供した場合における当該施設又は工作物の価額に相当する金額
(2) 法人が国等の行う公共的施設の設置等により著しく利益を受ける場合におけるその設置等に要する費用の一部の負担金(土地所有者又は借地権を有する法人が土地の価格の上昇に基因して納付するものを除く。)
(3) 法人(鉄道業又は軌道業を営む法人を除く。)が、鉄道業を営む法人の行う鉄道の建設に当たり支出するその施設に連絡する地下道等の建設に要する費用の一部の負担金
(共同的施設の設置又は改良のために支出する費用)
8‐1‐4 令第14条第1項第6号イ《公共的施設等の負担金》に規定する「自己が便益を受ける共同的施設の設置又は改良のために支出する費用」とは、法人がその所属する協会、組合、商店街等の行う共同的施設の建設又は改良に要する費用の負担金をいう。この場合において、共同的施設の相当部分が貸室に供される等協会等の本来の用以外の用に供されているときは、その部分に係る負担金は、協会等に対する寄附金となることに留意する。
(資産を賃借するための権利金等)
8‐1‐5 次のような費用は、令第14条第1項第6号ロ《資産を賃借するための権利金等》に規定する繰延資産に該当する。
(1) 建物を賃借するために支出する権利金、立退料その他の費用
(2) 電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する引取運賃、関税、据付費その他の費用
(注) 建物の賃借に際して支払った仲介手数料の額は、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。
(ノウハウの頭金等)
8‐1‐6 ノウハウの設定契約に際して支出する一時金又は頭金の費用は、令第14条第1項第6号ハ《役務の提供を受けるための権利金等》に規定する繰延資産に該当する。ただし、ノウハウの設定契約において、頭金の全部又は一部を使用料に充当する旨の定めがある場合又は頭金の支払により一定期間は使用料を支払わない旨の定めがある場合には、当該頭金の額のうちその使用料に充当される部分の金額又はその支払わないこととなる使用料の額に相当する部分の金額は、これを繰延資産としないで前払費用として処理することができる。
(注) 前払費用として処理した頭金の額についてその使用料に充当すべき期間又は使用料を支払わない期間を経過してなお残額があるときは、その残額は当該期間を経過した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。
(広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用)
8‐1‐8 令第14条第1項第6号ニ《広告宣伝用資産を贈与した費用》に規定する「製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用」とは、法人がその特約店等に対し自己の製品等の広告宣伝等のため、広告宣伝用の看板、ネオンサイン、どん帳、陳列だな、自動車のような資産(展示用モデルハウスのように見本としての性格を併せ有するものを含む。以下8‐1‐8において同じ。)を贈与した場合(その資産を取得することを条件として金銭を贈与した場合又はその贈与した資産の改良等に充てるために金銭等を贈与した場合を含む。)又は著しく低い対価で譲渡した場合における当該資産の取得価額又は当該資産の取得価額からその譲渡価額を控除した金額に相当する費用をいう。
(スキー場のゲレンデ整備費用)
8‐1‐9 積雪地帯におけるスキー場(その土地が主として他の者の所有に係るものに限る。)においてリフト、ロープウエイ等の索道事業を営む法人が当該スキー場に係る土地をゲレンデとして整備するために立木の除去、地ならし、沢の埋立て、芝付け等の工事を行った場合には、その工事に要した費用の額は、令第14条第1項第6号ホ《その他自己が便益を受けるための費用》に規定する繰延資産に該当するものとする。
当該スキー場において旅館、食堂、土産物店等を経営する法人が当該費用の額の全部又は一部を負担した場合のその負担した額についても、同様とする。
(注)
当該スキー場において旅館、食堂、土産物店等を経営する法人が当該費用の額の全部又は一部を負担した場合のその負担した額についても、同様とする。
(注)
1 既存のゲレンデについて支出する次のような費用の額は、その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。
(1) おおむねシーズンごとに行う傾斜角度の変更その他これに類する工事のために要する費用
(2) 崩落地の修復、補強等の工事のために要する費用
(3) シーズンごとに行うブッシュの除去、芝の補植その他これらに類する作業のために要する費用
2 自己の土地をスキー場として整備するための土工工事(他の者の所有に係る土地を有料のスキー場として整備するための土工工事を含む。)に要する費用の額は、構築物の取得価額に算入する。
(出版権の設定の対価)
8‐1‐10 著作権法第79条第1項《出版権の設定》に規定する出版権の設定の対価として支出した金額は、令第14条第1項第6号ホ《その他自己が便益を受けるための費用》に規定する繰延資産に該当するものとする。
(注) 例えば漫画の主人公を商品のマーク等として使用する等他人の著作物を利用することについて著作権者等の許諾を得るために支出する一時金の費用は、出版権の設定の対価に準じて取り扱う。
(同業者団体等の加入金)
8‐1‐11 法人が同業者団体等(社交団体を除く。)に対して支出した加入金(その構成員としての地位を他に譲渡することができることとなつている場合における加入金及び出資の性質を有する加入金を除く。)は、令第14条第1項第6号ホ《その他自己が便益を受けるための費用》に規定する繰延資産に該当するものとする。
(注) 構成員としての地位を他に譲渡することができることとなっている場合における加入金及び出資の性質を有する加入金については、その地位を他に譲渡し、又は当該同業者団体等を脱退するまで損金の額に算入しないものとする。
(職業運動選手等の契約金等)
8‐1‐12 法人が職業運動選手等との専属契約をするために支出する契約金等は、令第14条第1項第6号ホ《その他自己が便益を受けるための費用》に規定する繰延資産に該当するものとする。
(注) セールスマン、ホステス等の引抜料、仕度金等の額は、その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。
(簡易な施設の負担金の損金算入)
8‐1‐13 国、地方公共団体、商店街等の行う街路の簡易舗装、街灯、がんぎ等の簡易な施設で主として一般公衆の便益に供されるもののために充てられる負担金は、これを繰延資産としないでその負担金を支出する日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。
(移転資産等と密接な関連を有する繰延資産)
8‐1‐14 令第66条《移転資産等と密接な関連を有する繰延資産の範囲》に規定する「その他これらに類するもの」とは、例えば、次の繰延資産をいう。
(1) 適格分割又は適格現物出資によりノウハウの設定契約が移転した場合における8‐1‐6に定めるノウハウの頭金等
(2) スキー場においてリフト、ロープウエイ等の索道事業を営む法人が適格分割、適格現物出資又は適格現物分配により当該事業に係る資産等(法第32条第2項《適格分割等により引き継ぐ繰延資産に係る期中損金経理額の損金算入》に規定する資産等をいう。8‐1‐15において同じ。)を移転した場合における8‐1‐9に定めるスキー場のゲレンデ整備費用
(3) 適格分割又は適格現物出資により職業運動選手等との専属契約を移転した場合における8‐1‐12に定める契約金等
(双方に関連を有する繰延資産の引継ぎ)
8‐1‐15 適格分割又は適格現物出資により移転する資産等と移転しない資産等の双方に関連を有する繰延資産については、当該繰延資産の金額を合理的にあん分した金額を引き継ぐことができるものとする。
(効果の及ぶ期間の測定)
8‐2‐1 令第64条第1項第2号《繰延資産の償却限度額》に規定する「繰延資産となる費用の支出の効果の及ぶ期間」は、この節に別段の定めのあるもののほか、固定資産を利用するために支出した繰延資産については当該固定資産の耐用年数、一定の契約をするに当たり支出した繰延資産についてはその契約期間をそれぞれ基礎として適正に見積った期間による。
(繰延資産の償却期間の改訂)
8‐2‐2 固定資産を利用するために支出した繰延資産で当該固定資産の耐用年数を基礎として支出の効果の及ぶ期間(以下この節において「償却期間」という。)を算定しているものにつき、その後当該固定資産の耐用年数が改正されたときは、その改正された事業年度以後の当該繰延資産の償却期間は、改正後の耐用年数を基礎として算定した年数による。
(繰延資産の償却期間)
8‐2‐3 令第14条第1項第6号《公共的施設の負担金等の繰延資産》に掲げる繰延資産のうち、次の表に掲げるものの償却期間は、次による。
該当条項 | 種類 | 細目 | 償却期間 |
令第14条第1項第6号イ《公共的施設等の負担金》に掲げる費用 | 公共的施設の設置又は改良のために支出する費用(8‐1‐3) | (1) その施設又は工作物がその負担した者に専ら使用されるものである場合 | その施設又は工作物の耐用年数の10分の7に相当する年数 |
(2) (1)以外の施設又は工作物の設置又は改良の場合 | その施設又は工作物の耐用年数の10分の4に相当する年数 | ||
共同的施設の設置又は改良のために支出する費用(8‐1‐4) | (1) その施設がその負担者又は構成員の共同の用に供されるものである場合又は協会等の本来の用に供されるものである場合 | イ 施設の建設又は改良に充てられる部分の負担金については、その施設の耐用数年の10分の7に相当する年数 ロ 土地の取得に充てられる部分の負担金については、45年 |
|
(2) 商店街等における共同のアーケード、日よけアーチ、すずらん灯等負担者の共同の用に供されるとともに併せて一般公衆の用にも供されるものである場合 | 5年(その施設について定められている耐用年数が5年未満である場合には、その耐用年数) | ||
令第14条第1項第6号ロ《資産を賃借するための権利金等》に掲げる費用 | 建物を賃借するために支出する権利金等(8‐1‐5(1)) | (1) 建物の新築に際しその所有者に対して支払った権利金等で当該権利金等の額が当該建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつ、実際上その建物の存続期間中賃借できる状況にあると認められるものである場合 | その建物の耐用年数の10分の7に相当する年数 |
(2) 建物の賃借に際して支払った(1)以外の権利金等で、契約、慣習等によってその明渡しに際して借家権として転売できることになっているものである場合 | その建物の賃借後の見積残存耐用年数の10分の7に相当する年数 | ||
(3) (1)及び(2)以外の権利金等の場合 | 5年(契約による賃借期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間) | ||
電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する費用(8‐1‐6(2)) | その機器の耐用年数の10分の7に相当する年数(その年数が契約による賃借期間を超えるときは、その賃借期間) | ||
令第14条第1項第6号ハ《役務の提供を受けるための権利金等》に掲げる費用 | ノウハウの頭金等(8‐1‐6) | 5年(設定契約の有効期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び一時金又は頭金の支払を要することが明らかであるときは、その有効期間の年数) | |
令第14条第1項第6号ニ《広告宣伝用資産を贈与した費用》に掲げる費用 | 広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用(8‐1‐8) | その資産の耐用年数の10分の7に相当する年数(その年数が5年を超えるときは、5年) | |
令第14条第1項第6号ホ《その他自己が便益を受けるための費用》に掲げる費用 | スキー場のゲレンデ整備費用(8‐1‐9) | 12年 | |
出版権の設定の対価(8‐1‐10) | 設定契約に定める存続期間(設定契約に存続期間の定めがない場合には、3年) | ||
同業者団体等の加入金(8‐1‐11) | 5年 | ||
職業運動選手等の契約金等(8‐1‐12) | 契約期間(契約期間の定めがない場合には、3年) |
(注)
1 法人が道路用地をそのまま、又は道路として舗装の上国又は地方公共団体に提供した場合において、その提供した土地の価額(舗装費を含む。)が繰延資産となる公共施設の設置又は改良のために支出する費用に該当するときは、その償却期間の基礎となる「その施設又は工作物の耐用年数」は15年としてこの表を適用する。
2 償却期間に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨てる。
(港湾しゅんせつ負担金等の償却期間の特例)
8‐2‐4 公共的施設の設置又は改良のために支出する費用のうち企業合理化促進法(昭和27年法律第5号)第8条《産業関連施設の整備》の規定に基づき負担する港湾しゅんせつに伴う受益者負担金及び共同的施設の設置又は改良のために支出する費用のうち負担者又は構成員の属する協会等の本来の用に供される会館等の建設又は改良のために負担する負担金については、8‐2‐3に定める償却期間が10年を超える場合には、当分の間、8‐2‐3にかかわらず、その償却期間を10年とするものとする。
(公共下水道に係る受益者負担金の償却期間の特例)
8‐2‐5 地方公共団体が都市計画事業その他これに準ずる事業として公共下水道を設置する場合において、その設置により著しく利益を受ける土地所有者が都市計画法その他の法令の規定に基づき負担する受益者負担金については、8‐2‐3にかかわらずその償却期間を6年とする。
(注) 法人が下水道法第19条の規定により負担する負担金の取扱いは、7‐1‐8《公共下水道施設の使用のための負担金》によることに留意する。
(固定資産を公共的施設として提供した場合の計算)
8‐3‐1 法人がその有する固定資産を自己が便益を受ける公共的施設として提供した場合におけるその提供に係る繰延資産の額は、当該固定資産のその提供の直前における帳簿価額に相当する金額によることができる。
(償却費として損金経理をした金額)
8‐3‐2 法人が、繰延資産となるべき費用を支出した場合において、その全部又は一部を償却費以外の科目をもって損金経理をしているときにおいても、その損金経理をした金額は、法第32条第1項《繰延資産の償却費の損金算入》に規定する「償却費として損金経理をした金額」に含まれるものとする。
(分割払の繰延資産)
8‐3‐3 法人が令第14条第1項第6号《公共的施設の負担金等の繰延資産》に掲げる繰延資産となるべき費用の額を分割して支払うこととしている場合には、たとえその総額が確定しているときであっても、その総額を未払金に計上して償却することはできないものとする。ただし、その分割して支払う期間が短期間(おおむね3年以内)である場合には、この限りでない。
(長期分割払の負担金の損金算入)
8‐3‐4 法人が公共的施設又は共同的施設の設置又は改良に係る負担金で繰延資産となるべきものを支出した場合において、当該負担金が次のいずれにも該当するものであるときは、その負担金として支出した金額は、その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができるものとする。
(1) その負担金の額が、その負担金に係る繰延資産の償却期間に相当する期間以上の期間にわたり分割して徴収されるものであること。
(2) その分割して徴収される負担金の額がおおむね均等額であること。
(3) その負担金の徴収がおおむねその支出に係る施設の工事の着工後に開始されること。
(固定資産を利用するための繰延資産の償却の開始の時期)
8‐3‐5 法人が繰延資産となるべき費用を支出した場合において、当該費用が固定資産を利用するためのものであり、かつ、当該固定資産の建設等に着手されていないときは、その固定資産の建設等に着手した時から償却する。
(繰延資産の支出の対象となった資産が滅失した場合等の未償却残額の損金算入)
8‐3‐6 繰延資産とされた費用の支出の対象となった固定資産又は契約について滅失又は解約等があった場合には、その滅失又は解約等があった日の属する事業年度において当該繰延資産の未償却残額を損金の額に算入する。
(繰延資産の償却額の計算単位)
8‐3‐7 繰延資産の償却限度額は、費目の異なるごとに、かつ、その償却期間の異なるごとに計算する。
(注) 法人が継続して8‐2‐3の表の種類及び細目欄の区分ごとに、かつ、その償却期間の異なるごとに繰延資産を区分してその償却限度額を計算している場合には、これを認める。
(支出する費用の額が20万円未満であるかどうかの判定)
8‐3‐8 令第134条《繰延資産となる費用のうち少額のものの損金算入》の規定を適用する場合において、支出する金額が20万円未満であるかどうかは、令第14条第1項第6号イ《公共的施設の負担金等の繰延資産》に掲げる費用については一の設置計画又は改良計画につき支出する金額(2回以上に分割して支出する場合には、その支出する時において見積もられる支出金額の合計額)、同号ロ及びハに掲げる費用については契約ごとに支出する金額、同号ニに掲げる費用についてはその支出の対象となる資産の1個又は1組ごとに支出する金額により判定する。